相続コラム

「2010年5月」のコラム

金融機関の店舗で働く職員方は、毎朝必ず新聞朝刊の「死亡広告」を全員で回覧します。
そしてその店舗のお得意様が亡くなっていることを発見すると、即座にその名義の預金口座を「凍結」つまり預け入れや引き出しが一切できないようにしてしまいます。

この「凍結」、相続人の皆様にとっては非常に迷惑千万ですよね。
だって、お通夜・本葬式・初七日・四十九日・・・、人が亡くなるということは、何かと物入りです。
手持ちの現金は、いくらあっても足りません。
ああ、故人の預金口座を引き出すことができるなら、どんなに助かるだろうか・・・、
というご経験をされた方は多いはずです。

この「銀行口座の凍結」に対処する方法は、次の通りです。

1: 新聞に死亡広告を載せない
先に書いた通り、銀行側は新聞の死亡広告をチェックして預金凍結します。
これを逆に考えますと、死亡広告を載せなければ、銀行側はその人が亡くなった事実を発見できませんので、預金口座は凍結されません。
ただ、小規模な家族葬などであればよいのですが、通常の葬儀で沢山の方々に周知させる必要がある場合、この手法はあまり現実的ではありませんね。


2: 凍結される前に現金を引き出しておく
死亡広告が掲載された新聞が発行される前に、身内のどなたかがあらかじめ現金を引き出してしまう、という方法です(こんなことを書くと銀行さんに怒られてしまいそうですが・・・、でも困っている人々のために、あえて書かせて頂きます)。
この方法が最も現実的である、と私は思います。
ただし、ご注意頂きたいことがいくつかあります。

 (1)全ての身内関係者の同意を得たうえで行いましょう。後になって、他の身内が「なんで勝手に引き出したんだ!?」とクレームを付けて揉めるケースが稀にあります。

 (2)引き出した現金で何を支払ったか、領収書を全て保管しておきましょう。領収書が発行されない支払いについても必ずメモしておきましょう。そうしないと「誰かがネコババしてないか!?」と身内同士で揉める可能性があります。

たとえ面倒でも、簡易な出納記録簿(あまり堅苦しく考えず、家計簿のような感覚で一向に構いません)を作成しておくことをお薦めします。


3: 凍結後に預金口座の払い戻し(又は解約)を依頼する
本来はこれが正攻法です。ただし、非常に面倒です。

 (1)銀行所定の「相続預金口座払戻(解約)依頼書(その銀行によって名称は若干異なりますので、各自ご確認下さい)」に相続人全員の署名捺印をして提出する。

 (2)故人の戸籍(出生時から死亡時まで全て)、相続人全員の印鑑証明など必要書類を全て取りそろえて、上記(1)の依頼書と共に提出する。

 (3)あらかじめ遺産分割協議書を作成して、一緒に提出するのが望ましい。


必要書類を全て取り揃えるのは非常に手間がかかりますし、更に銀行内部手続き等の事情により即日凍結解除!とはいかず、払い戻しできるまで数日かかってしまうのが通常ですので、「今日か明日にでも、今すぐ現金が欲しい」という火急の際にはお薦めできません。

人が亡くなって通常の葬儀を執り行う場合、何だかんだで2〜3百万円かかるのが通常です。
どう対処すべきか、慌てる前に、出来るだけ早めに考えておくことが重要です。

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