相続コラム

「2010年8月」のコラム

名義預金の帰属者(つまり実質的な所有者)は誰なのか?

その判断基準はおおむね次の通りです。

 

1.資金の原資

   そもそも、その名義預金口座のお金は、どこから発生したものでしょうか?

   Aさんが汗水流し働いて得た給料をせっせと預け入れたのであれば、

   その預金はAさんのものである、といえるでしょう。

   そうではなく、例えば、他人であるBさんのお金を振り込んだ、ということであれば、

   その原資はAさん自身から生じたものではありませんので、

   その帰属判断が大きな問題となります。

 

2.管理支配

   その預金口座の通帳と印鑑はAさんが管理し、

   かつAさんの意思でいつでも好きな時に預金残高を引き出すことができる、

   という状態であれば、その預金口座はAさんのものである、といえましょう。

   一方、Aさんの名義であるにもかかわらず、その通帳等はBさんが管理し、

   その預金引き出し等もAさんの自由にできない、ということであれば、

   その預金口座の管理支配権はBさんの側にありますので、

   Aさんの財産である、と主張するのは少々難しいのではないでしょうか。

 

相続の際は、

上記の1と2の基準を総合的に勘案して、

その名義預金の帰属を判定することになります。



例えば、このようなことがあったとします。

 

資産家Aさん(男性)が、妻Bさん名義の預金口座を開設しました。

Aさんは、自分の財産を、そのB名義預金に毎年少しずつ移し替えました。

そして数十年経ち、そのB名義預金は結構な残高になりました。

Bさんはその事実を知っておりましたが、特に何も言いませんでした。

 

そして、Aさんが亡くなりました。

 

Aさんは資産家の筈なのに、Aさん名義の預金残高が・・・随分と少ない。

一方、専業主婦であったBさん名義の預金残高が・・・随分と多い。

 

相続税を申告する際、そのB名義預金はどのような扱いになるでしょうか?

この扱いを一歩間違えてしまうと、とんでもないことになります。

(脅かすわけではありませんが)後々の税務調査で大問題に発展することがあります。

 

本来はAさんの財産なのに、形式上の名義はBさんになっている。

このような現象は、特に預金口座に多く見られます。

これを「名義預金」といいます。

つまり「実質上の名義(Aさん)」と「形式上の名義(Bさん)」が異なる、ということです。

 

相続税の計算上、最も注意すべき「名義預金」のポイントを、

シリーズ形式で数回に渡って解説します。

 

ご自身のご家族名義の預金口座にお金を移動させる行為は、

くれぐれもご注意ください!

たとえその相手が長年連れ添った配偶者であっても、です。



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