相続コラム

「2012年7月」のコラム

一般家庭において、例えばちょっとした庭をつくり、木を植えたり池を掘ったりしているケースは少なくありません(まあ私のようなマンション住まいには縁のない話ですが・・・)。


これらにつきましても、有形の財産であることは間違いありませんので、相続が発生した際には相続財産として取り扱われます。


では、相続税の計算上、どのように評価すればよいのでしょうか?

財産評価基本通達においては、次のように定められております。


財産評価基本通達92(3) (付属設備等の評価 - 庭園設備)

庭園設備(庭木、庭石、あずまや、庭池等をいう。)の価額は、その庭園設備の調達価額(課税時期においてその財産をその財産の現況により取得する場合の価額をいう。以下同じ。)の100分の70に相当する価額によって評価する。


噛み砕いて説明しますと、「その庭と同じものを新たに作る場合における支払額の7割」を評価額とする、ということです。


理屈は分かりました。


さて、現実問題として、この規定をどこまで厳密に適用すべきか、という議論になります。

「そんなこと言っても、ウチの庭なんて猫の額(ひたい)ぐらいの広さしかないんだけど。せいぜいトマトなど家庭菜園をちょこっとやってるだけだし。こんなものをいちいち評価しなきゃならんの?」「土地は路線価とかで評価するんだから、それと一緒でいいじゃん。」とお感じになる納税者様は多いでしょう。それは至極ごもっともなご意見だと思います。


この問題につきましては、法律上明文化されたものではありませんが、我々実務家の間でほぼ通説になっている考え方がございます。それは・・・

「メチャメチャ豪華な豪邸の庭園は個別に評価する必要があるが、そうでなければ(つまりネコのヒタイ程度であれば)評価する必要なし!」というものです。


さて、ここで次の議論が登場します。

「豪華なものと、そうでないものって、どこで線引きすればよいのか?」というものです。

世の中に存在する庭園が「明らかに豪奢な庭園」と「ネコのヒタイ」だけであれば話は楽ですが、そう単純ではありません。どちらにも解釈できる微妙な立場の庭園もあるでしょう。こればかりは、納税者、税理士、税務当局の、いわゆる「解釈」に任せるしかありません。納税者が「ネコのヒタイだ!」と言い張るのであればその旨申告すればよし、その後の税務調査で調査官が「いや立派な庭園だ!」と言い張るのであれば、最終的には法廷の場で決着をつけるしかありません。

人間の価値観は多種多様なので、こればかりは致し方ありません。


さて、またまた次の論点です。

「調達価額の7割、は分かったけど、その調達価額ってどうやって算定するの?」

これは実務上、非常に難しい論点かもしれません。

その庭園をいくらで作ったかなんて、いちいち請求書や領収書を保存しているワケありませんし。

現実的には、専門の業者さんに来てもらい、「これと同じものを作るにはいくらかかるんでしょうね?」と、鑑定書なり見積書なりを作成してもらうしかないでしょう。


なお最後に、この庭園の評価に関しては、意外と税務調査で論点となる事例が多いようです。

ご自宅の庭が少し立派なものであるならば、それなりの心積もりをしておく必要がありそうです。



平成24年度の税制改正法案が可決・成立したことに伴い、国外財産調書制度が新たに創設されましたので、その概要をお知らせします。


簡単に一言で説明しますと、「あなたが国外に隠している(?)財産は、すべて税務署に報告してくださいね。さもないとお仕置きしますよ(by.税務署)」というものです。


もう少し詳しく解説します。


まず、その年12月31日において合計5,000万円える国外財産(つまり外国に存在している財産)を有する個人は、その財産の種類や数量、価額などを記載した「国外財産調書」を、その翌年3月15日までに税務署に提出しなければなりません。


「メンドくさいから(税務署に知られたくないから)そんなの嫌だ」という人には、罰則規定があります。その提出内容にウソの記載をした人、または提出期限までに提出しなかった人に対して、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。これは結構重いですね。


逆に優遇規定もあります。

国外財産にかかる所得について所得税の申告をし忘れたとき、または実際よりも少ない額の申告をしたときは、通常10〜20%の無申告加算税・過少申告加算税が課されるのですが、この国外財産調書に記載された財産の所得にかかる分については、これらの加算税が5%軽減されます。

・・・まあ、これを優遇と解釈するかどうかは人それぞれでしょうが。


オチもあります。

逆に国外財産調書に記載しなかった財産の所得税につき申告漏れがあった場合には、上記の加算税が5%上乗せされます。

・・・もはや血も涙もありません。


なおこれらの制度が適用されるのは、平成26年1月1日以降に提出する分(つまり平成25年12月31日に有する財産の分)からです。

罰則規定は、1年遅れて平成27年1月1日以降に提出する分から適用されます。


国外で多額の財産を有している方につきましては、よくよくご注意下さいますようお願い申し上げます。



親が認知症を患い、正常な判断能力を失った状態において、その子が勝手に親の預金口座からお金を引き出して使い込んでしまう、というのは誠に残念ながら、よくある話です。


道徳的云々、引き出して使い込んでしまった理由云々は、ここでは問いません。このような事態が発覚した場合に、遺産分割や相続税申告において、どう対応すべきかを純粋に解説したいと思います。


まず法律関係ですが、そもそも親は認知症で判断能力を失っているのですから、ご自身の預金口座を子が勝手に引き出して使い込んでいる事実を理解することはできませんし、そもそも事前または事後にその事実を認容する(つまり「ああいいよ、私の金を使ってもいいよ」と許してあげる)ことは能力的に不可能です。


ですので、民法上のいわゆる「贈与」とするのは非常に無理があるといえましょう。贈与契約は「あげる側」と「もらう側」の双方の合意で成立するものであり、そもそも判断能力を失った親が合意の意志を表示することはできないからです。


ですので、子は、親の承諾を得ずに使い込んだことになりますので、この行為は、親に対して返済義務を負う行為であり、すなわち親から子に対する求償債権(逆にいえば子から親に対する返済債務)が発生することになります。


債権は、現金や不動産などと同じく、立派な財産です。


ですから、このままの状態で親が亡くなりますと、その貸付債権も相続財産の一部を構成するものとして、遺産分割協議の対象となります。


この債権を、その子自身が相続することにすれば、債権者と債務者が同一の者になりますので、その債権は自動的に消滅することになります。


逆に、この債権を別の相続人が相続することにすれば、その子はその相続人に対して返済義務を負い続けることになります。


ですので、この債権の扱いをどうするか、相続人同士でよく話し合わなければなりません。他にもたくさん財産があればよいのですが、その子が使い込み過ぎてスッカラカンになってしまっている場合(これまた残念ながらよくある話です…)は、相続人間で相当揉めてしまうことになります。


なお相続税の申告においては、この債権も当然ながら相続財産として申告する必要があります。さもないと、税務署が後日、故人の預金口座の動きをチェックした際に「あれ?故人の口座からお金が随分引き出されているけど、一体どこに行ったのだろうか?」と怪しまれ、税務調査でこっぴどく絞られることになります。


そのような事態にならないよう、親が認知症で判断能力を失った際には、すみやかに成年後見人を選任して財産をしっかり管理すると共に、仮に子の一人が何らかの事情で親の金を使いたい場合には、他の推定相続人全員の了承を得たうえで行うべきです。争いというものは、生じてからどうしようと悩むのではなく、まず争いを未然に防止する手立てを講じるべきでありましょう。



下記の通り、


北広島市にて出張無料相談会を開催します。



【 北広島市 相続無料相談会開催のお知らせ 】



日時: 平成24年7月28日(土) 9時半〜16時


場所: 北広島市ふれあい学習センター 夢プラザ



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 (電話受付時間 月曜〜金曜 9:00〜18:00)




なお、


先月23日に江別市民会館にて開催された出張相談会は、


かなり早い時期に午前中の予約相談枠が埋まり、


当日はほぼ満員状態でございました。


今回も同様の事態が予想されますので、ご予約はお早めにお願いします。



ご相談内容に応じて、


弁護士税理士司法書士のうち


最も相談内容に適切な有資格者が対応させて頂きますので、


ご予約の電話にて、相談内容を出来るだけ詳しくお伝え下さい。


皆様のお越しをお待ち申し上げております。



さて、相続税の申告をする際において、家財道具はどのように評価すればよいのでしょうか?


財産評価基本通達では、「一般動産」として次のとおり定められております。


財産評価基本通達128(評価単位)

・・・(略)・・・ 原則として、1個又は1組ごとに評価する。

ただし、家庭用動産、農耕用動産、旅館用動産等で1個又は1組の価額が5万円以下のものについては、それぞれ一括して一世帯、一農家、一旅館等ごとに評価することができる。


よほど高価なもの(転売可能な海外アンティーク家具など)は別として、通常の家財であれば「ひと山いくら」で評価していいですよ、ということになっております。


同129(一般動産の評価)

一般動産の価額は、原則として、売買実例価額精通者意見価格等を参酌して評価する。

ただし、売買実例価額、精通者意見価格等が明らかでない動産については、その動産と同種及び同規格の新品の課税時期における小売価額から、その動産の製造の時から課税時期までの期間(カッコ内略)の償却費の額の合計額又は減価の額を控除した金額によって評価する。


前回の美術品と同様、売買実例やプロの鑑定評価で評価してくださいね、ということです。

上記のとおり、高価なアンティーク家具のようなものについては個別に鑑定評価してもらい、そうでないものについては「全部まとめて10万円〜20万円くらい」とアバウトに評価するのが実際の実務ではないでしょうか。私はそんな感じでやっておりまして、少なくとも今まで税務署さんからクレームを受けたことはありません。故人の家の中を見せてもらい、質素な感じであれば10万円、やや豪華な感じであれば20万円プラスアルファ、というようなイメージです。

実際のところは、10万円どころか、処分業者に費用を払って処分しなければならないものでありましょうから、マイナスの価値で評価したいところですが・・・さすがにそこまでの勇気は私にはありません。

以前、国税OBの税理士先生から教えてもらった話ですが、一昔前の税務署では、その家の固定資産税評価額の3割程度を、家財の評価額として考えているようです。その話を聞いて「んなアホな」と内心思ってしまいました。建物の固定資産税評価額は減価償却で年々下がりますが、一定の下限があるため、どんなに下がっても百数十万円ぐらいの評価額で落ち着きます。今にも倒れそうなボロ家が百数十万円で評価されるのです。それ自体はまあそういう決まりになっておりますから仕方ないのですが、その家の中にある家財を3割で評価すると、約50万円ぐらいの評価額になってしまいます。これは余りにも高すぎます。国税OBの税理士さんは、皆さんこんな評価をしていたのでしょうか?ちょっと疑問です。

いずれにしても、故人の財産目録には、自宅のほか、その自宅内にある家財についても「一括10〜20万円」として載せるべきでありましょう。



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