相続コラム

「2012年8月」のコラム

さて、ここで一つ大きな疑問が出てきます。


「契約の当事者が亡くなった後も、この契約は有効であり続けるのか?」


噛み砕いて説明しますと、例えば


身寄りのないAさん(男性・75歳)が、「自分が死んだ後の始末(葬儀・埋葬・遺品処分など)をよろしく」という契約を、B行政書士と締結した、とします。

この契約が発動されるのは、Aさんが亡くなった時点ということになります。

でも、亡くなった人を当事者とする契約って、本当に効力があるのでしょうか?

Aさんが亡くなった時点で、その契約は無効になってしまう(つまりB行政書士は後始末の業務をすることができない)のではないでしょうか?


ということです。


民法653条(委任の終了事由)

委任は、次に掲げる事由によって終了する。

1 委任者又は受任者の死亡 ・・・(後略)


この論点については、次の最高裁判決がございます。


最高裁平成4年9月22日判決

委任者が、受任者に対し、入院中の諸費用の病院への支払、自己の死後の葬式を含む法要の施行とその費用の支払、入院中に世話になった家政婦や友人に対する応分の謝礼金の支払を依頼する委任契約は、委任者の死亡によっても当然に同契約を終了させない旨の合意を包含する趣旨のものであり、民法653条の法意は合意の効力を否定するものではない。


つまり、

自らの死後も継続する趣旨の契約については、その死後においても効力を有し続けるものと判断してよろしい、

ということです。


ですので、契約の文言に、「この契約はAの死後も効力を有するものであることをAとBは合意した」旨の一文を入れておけばよろしい、ということになります。



そもそも何故、死後事務委任契約が必要なのでしょうか?


具体例で考えてみましょう。


A氏(男性・75歳)は、妻に先立たれ、一人娘は米国人と結婚してずっと米国に居住しております(まるでTVドラマのような事例ですが、今や国際結婚は珍しいことではありませんので、実際によくある例です)。


兄弟など親類とも疎遠になってしまい、事実上身寄りはほぼ無い状態です。


さて、このような場合、A氏に何らかの事態が発生すると一体どうなるのでしょうか?


いわゆる「孤独死」状態になってしまいます。


やらなければならない事務作業は山ほどあります。


・葬儀、埋葬

・市役所への死亡届などの手続き

・年金の支給停止手続き

・遺品の処分

・葬儀代、家賃、光熱費、病院代などの支払い etc...


これらの作業を、一体誰がやってくれるのでしょうか?


我が国には「立つ鳥後を濁さず」という格言があります。「誰にも迷惑を掛けず、綺麗に死にたい」という思いは、平均的な日本人ならば当然思うでしょう。


そこで、信頼できる第三者との間で「死後事務委任契約」を結びます。

その契約において、例えば


・葬儀はどの業者に、いくらでお願いするか(宗教はどうするか)

・遺品はどのように処分してもらうか

・各種支払はどのようにお願いするか


というようなことを、全て事前に取り決めておくのです。


例えば葬儀代などは、その内容によって料金はピンキリですが、いざ自分が亡くなったら発生するであろう、それらの費用を、あらかじめ第三者に預けておく方法が考えられます。そうすれば、その事務を執行する人は、その預り金を取り崩して支払えばよいので事務を円滑に遂行できますし、お釣りが出た場合は相続人にお返しすれば良いのです。


身寄りのないお年寄りは今後益々増加すると思われますので、死後事務委任契約のニーズは今後どんどん増えていくと思われます。



下記の通り、


札幌市北区篠路にて出張無料相談会を開催します。



【 北区篠路 相続無料相談会開催のお知らせ 】



日時: 平成24年8月25日(土) 9時半〜16時


場所: 篠路コミュニティーセンター 会議室2



相続問題を抱えていませんか?

相続問題は早めの相談、早めの対応が大切です。

生前の対策から遺産分割のトラブルまであらゆる相続問題について

税理士、弁護士、司法書士が解決のお手伝いをいたします。

まずはお気軽にご相談ください。



【ご予約受付窓口】

 札幌駅前相続サポートセンター

 フリーダイヤル 0120−973−813

 (電話受付時間 月曜〜金曜 9:00〜18:00)




なお、4〜7月に江別・北広島両市にて開催された出張相談会は、


かなり早い時期に午前中の予約相談枠が埋まり、


当日はほぼ満員状態でございました。


今回も同様の事態が予想されますので、ご予約はお早めにお願いします。



ご相談内容に応じて、


弁護士税理士司法書士のうち


最も相談内容に適切な有資格者が対応させて頂きますので、


ご予約の電話にて、相談内容を出来るだけ詳しくお伝え下さい。



今後も札幌市・江別市・北広島市にて随時開催する予定です。


皆様のお越しをお待ち申し上げております。



我が国の高齢社会化は今後ますます加速し、全人口における比率が急激に高まる老人世代のサポートをどうするかが緊急の課題となっております。


いわゆる2025年問題と言われるものがあります。

2025年(平成27年)は、団塊の世代が75歳を迎え、我が国の高齢者人口はピークに達します。これら高齢者を支えるインフラ(高齢者住宅など)が、現状圧倒的に不足しており、これを2025年までに何とかしなければならない、ということで医療・介護分野双方が躍起になっている状態です。


さて、我々サムライ業がこの問題に対してどう関わっていくか、ということになりますと、まあ色々とあるのですが、やはりまずは「高齢者を如何にして法的に保護するか」が一番重要になってくるのではないかと思います。


例えば、ですが、この問題に対して今現在制度化されているのは


任意後見制度(または法定後見制度)

遺言


この二つが代表的なものでありましょう。


しかしこの二つだけで全ての問題を解決できるかというと必ずしもそうではなく、どうしても隙間が生じてしまいます。

例えば、


「任意後見の効力が発動するまでの間、私の財産管理はどうすれば良い?」

「私が死んだ直後の様々な事務を誰にお願いすれば良い?」


というようなことです。

身寄りのない、あるいはいても疎遠な方にとっては、これは非常に切実な問題です。

そこで、このような隙間を埋める手法として、


財産管理委任契約

死後事務委任契約


というようなものが利用されることがあります。


上記のうち「死後事務委任契約」について詳しく考えてみたいと思います。


死後事務委任契約とは、その名の通り、例えば受任者が亡くなった直後における、入居施設やら病院やら諸々の支払い、お役所への各種届け出、葬儀、埋葬などの事務を、「あなたにお任せします」という内容の契約を生前に交わしておくことです。


一見するととても便利な契約に思えますが、実は結構脆いです。

まず法的な根拠が非常に危うい。

根拠となる法律が存在しませんから、民法など既存の法律を当てはめるしかないのですが、そもそも生前に交わした契約が、その当事者が亡くなった後も効力が続くものなのか?相続人がいる場合、その相続人に対してこの契約がどこまで通用するのか?


例えば、死後事務委任契約において「葬儀は○○社にお願いします」という文言があり、既にその○○社に代金が前払いされていたとしましょう。

その後、その方は亡くなり、○○社がその契約に基づき葬儀を行おうとしたところ、今まで音信不通だった相続人がいきなり登場して「勝手に葬儀をしないでください!前払いしたお金を私に返してください!」と文句を言いだして来たら、一体どうすればよいのでしょうか?


これらの諸問題について、数回に分けて論じてみたいと思います。



このページの先頭へ戻る