相続コラム

「2015年2月」のコラム

不動産所有方式の注意点、その5です。

オーナー個人が法人に対して債権を有している場合、その債権は個人の財産となります。
つまり将来の相続税の課税対象となります。

個人と法人との間で債権債務が生じる理由としては、例えば次のようなケースが考えられます。

・役員報酬の未払い
・法人の借入金返済、固定資産税の支払い等の原資を自力で賄うことが出来ず、
 止むを得ずオーナー個人が法人に拠出した

これらはいずれも、法人の資金繰りが上手く廻っていないことに起因します。
法人が自力で資金繰りを廻すことが出来れば、つまり収益と支出のバランスが上手く取れていれば、このようなことは回避できます。
つまり根本的な経営の問題です。

極端な例を申し上げますと、万年赤字体質で、法人の株式評価はゼロであるにも関わらず、オーナーが法人に対して多額の貸付金を有しており、その貸付金に対して多額の相続税が課される、という笑えない話があります。

このようなケースにならないよう、経営の舵取りはしっかりと行う必要があります。
個人と法人のサイフは明確に区分し、お互い債権債務を有しない状態にするのがベストです。

不動産所有方式の注意点、その4です。

オーナー所有の土地を会社に移転することの是非について。

結論から申し上げますと、積極的にお勧めはしません。

第一の理由として、土地は非減価償却資産です。
建物は減価償却することによって経費化されますが、土地はそれができませんので、買取価格がそのまま帳簿に残るだけの存在になります。

第二の理由として、移転することに伴うコストの発生。
これは前回お話した論点と同じですので省略します。

第三の理由として、移転に伴いオーナー個人の資産価値が増加すること。
原則として時価での移転となりますので、オーナーの資産構成が土地から現金(会社が現金を用意できない場合は、その額に相当する債権)に変わります。つまり額面評価ですので、不動産の評価額圧縮効果が吹き飛んでしまいます。
だったら建物も同じことじゃないの、と思われる方もいらっしゃるでしょうが、建物の移転は長い目で考えると、今後発生する現金収入を会社に帰属させる効果がありますので、長期的には資産圧縮効果が充分果たせると考えられます。しかしわざわざ土地まで移転させる意味はないと思います。

第四の理由として、いわゆる「無償返還の届け出」を出すことによって、個人所有の土地評価額を80%にすることが可能なこと。
残り20%分は会社の株式評価に反映されるのですが、その問題点は株主構成を見直すことによって回避できるのは以前説明した通りです。

これらの理由等をもって総合的に判断すると、

・土地はオーナー個人の所有
・建物は会社の所有

とするのが効果的ではないかと思います。

最も、様々な事情がありますので、全てのケースにおいて上記の考えが適用されるべきとまでは断言しません。
あくまでもケースバイケースでお考え下さい。


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