相続コラム

「2015年5月」のコラム

不動産の登記というものは「第三者への対抗要件の具備」が第一義なので、必ずしなければならない、というものではありません。

従って、不動産の登記内容が必ずしも正しいとは限りません(例えば昔:原野→今:宅地なのに、相変わらず原野のまま地目が変更されていない、など)し、極端な話、登記されているべきモノが登記されていない、ということがままあります。

その代表的な例が、自己資金で建築した建物です。
金融資産を沢山持っている方が、ローンを組まずに自宅等を建築し、登記費用がもったいないので登記しなかった、というようなケースが多いです。

登記されてなくとも、建物は現実に存在します。
固定資産税は当然課されますので、課税明細をみれば未登記建物の評価額がしっかりと記載されているはずです。

その評価額を基準として、これまた当然ですが相続税の課税対象にもなります。

遺産分割協議を行い、その未登記物件を誰が相続するかを決めなければなりません。
分割協議書には、

「相続人○○は以下の物件を取得する。 土地××上に存する建物(未登記)」

というような感じで記載することになります。

相続後すぐに取り壊すならともかく、しばらく使い続ける、あるいは売却する予定があるのであれば、せっかくですから登記することをお勧めします。
土地家屋調査士と司法書士に依頼することになります。

報酬、登録免許税など結構な額にはなりますが、せっかくの機会です。
特に売却する予定があるのであれば、登記しなければ売却しようにもできませんから猶更です。

もちろん、建築した時点で登記するのがベストな選択であることは言うまでもありません。

相続税を算定する際に、いきなり厳密な評価額で算定するのではなく、まずザックリと大雑把な評価額で算定して「まあ大体○○○円ぐらいかかりそうですね」と心の準備をして頂き、それから時間をかけて厳密な評価作業に取り掛かるのが通常です。

その際、不動産の評価額は固定資産税の評価額を用いるのが一般的でしょう。

固定資産税の評価額は、時価の約7割。
相続税の評価額(路線価など)は、時価の約8割。

と言われております。

なので

固定資産税の評価額×1.1≒相続税の評価額

とザックリで概算します。

ザックリなら、まあこれでも構わないと思います。

しかし、上記は必ずしも全てのケースに当てはまるわけではありませんので、ご注意ください。
1.1どころではなく、相当乖離しているケースがたまにあります。
具体的に言いますと、市街地農地とか、私道と宅地が入り組んでいる地形などです。
このような使われ方をしている土地の場合、固定資産税と相続税(=財産評価基本通達)では、どうも評価の考え方が根本的に違うようです。
厳密に評価すると1.5倍ぐらい乖離していた(相続税評価の方が高かった)、というケースが珍しくありません。

遺産額が明らかに基礎控除額を上回っており、とりあえずザックリ概算で構わないので相続税額を知りたい、という場合には、固定資産税評価額の1.1倍で計算するのは一向に構わないと思います。

しかし、基礎控除額スレスレのケースで1.1倍の概算を行い「ああ、これなら基礎控除額を上回ることはなさそうだな、相続税の申告手続きをするのはやめておこう」と思い込むのは非常に危険です。
いざ厳密な評価をしてみると、基礎控除額をかなり上回っており、申告期限後に税務署が玄関のチャイムをピンポーン…、慌てて税理士が立会い…、という笑えない実話があります。

固定資産税の評価額と相続税の評価額は、必ずしも近似値であるとは限りません。
よく注意しましょう。

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