相続コラム

「2015年10月」のコラム

一例を挙げますと、

夫婦の間に子が生まれました。

父は嬉しさのあまり、その子名義の預金口座を開設しました。
そして少しずつ、その子名義の口座にお金を入金していきました。

父が亡くなった頃、その口座の残高は数百万円に達しておりました。
子は、父の遺品整理をしていたときに、初めてその口座の通帳を発見しました。

これはよくある話だと思います。
さて、これは贈与に該当するのでしょうか?

答えは、「贈与に該当しません」です。
私は税理士なので、あくまでも税務的な考え方に特化してお話しますが、税務上は贈与とは認められず、父の財産となります。

子から父への「ありがとう」が無かったからです。

口座の名義が子であろうとも、実質的には父の財産です。
税務の世界では、形式よりも実質を重視するのです。

生前贈与を友好的に活用したければ、
まずは贈与の要件をしっかり満たすことが必要です。

結論から申し上げますと、
上手に使えば有効ですし、下手に使えば全く意味がありません。

その辺をしっかりとわきまえず、
何の戦略も無しに漠然とやってしまっている例を
私は余りにも多く見てきております。

まずそもそも、
贈与の要件を満たしていないケースが非常に多いです。

贈与とは、民法という法律で定められている行為です。
分かりやすく噛み砕きますと、

あげる人が「あなたにコレをタダであげますよ」

と言い、

もらう人が「ありがとうございます」

と言う。

ただそれだけのことです。

が、それだけの要件が成立していないケースが余りにも多い。
特に近しい身内であればあるほど。
それが世の実態です。

特に、もらう側のスタンスに問題があることが多いです。
はっきりと「ありがとう」という意思を表示していない、ということです。

例えばどういうケースがあるか、については、
次回説明します。

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