相続コラム

「2016年4月」のコラム

公正証書の遺言は、全部で三通作成されます。
原本、正本、そして謄本です。


原本は、公証役場に保管されます。
正本は、通常は遺言者自ら保管し、遺言者の死後に遺言執行者または遺族がこれを使って執行手続きを行います。
謄本は、その名の通り、正本のコピーのようなものです。


ですので通常は正本と謄本は当事者の手元にあるはずなのですが、長い年月を経て紛失してしまうことがあります。
そのような際に活用して頂きたいのが、公証役場での「検索」です。

遺言の検索は、遺言した方が死亡した場合のみ、相続人、遺言執行者などの利害関係者が請求できます。
遺言者が生存中は、遺言公正証書の検索の依頼・謄本請求ができるのは遺言者本人のみです。たとえ相続人であっても請求できません。


●遺言公正証書の検索・謄本請求についての必要書類

? 遺言者本人が死亡したことを証明する書類
   除籍謄本・死亡診断書等
? 請求人の利害関係者であることを証明する書類
   戸籍謄本(?の除籍謄本に、請求人の名前が載っている場合は不要)
? 請求人の身分を証明するもの
   印鑑登録証明書1通及び実印(発行後3ヶ月以内のもの)
      又は
   官公庁発行の顔写真付き身分証明書及び認印
     パスポート・運転免許証・住民基本台帳カード(顔写真付)など


例えば「故人が生前に遺言を作成したかどうか、念のため確認したい」というような場合にも活用できます。
意外と作成していたりするものです。

昨年の夏頃、「遺言控除」なるものが新聞紙上を賑わせました。

「自民党の「家族の絆を守る特命委員会」は、遺言に基づいて遺産を相続すれば残された家族の相続税の負担を減らせる「遺言控除」の新設を要望する方針を固めた。遺言による遺産分割を促し、相続をめぐるトラブルを防ぐ狙いだ。...2018年までの導入をめざす。(日本経済新聞H27.7.9記事より抜粋)」

その後何の音沙汰もないので、もう自民党の間でも忘れられてるのかもしれませんし、あるいは着々と水面下で動いているのかもしれません。

発案者側の思惑がイマイチよくわからないのですが、普通に考えれば「遺産分割内容をしっかり定めた遺言を残すことによって、遺産争いを減らそう」というのが狙いなのかな、とも思えるのですが、果たしてそんな単純に減るものだろうかと思います。

いくら故人の遺志だといっても、あまりにも不公平な分割内容だと遺族間の不平不満は避けられないでしょうし、遺留分を侵害していれば結局は争いへと繋がります。

また例えば遺言に記した財産に漏れがあったりすると、その漏れた財産は分割協議しなければなりませんので、あまり意味がなくなることがあります。

遺言を残しておけば万事OK、というのはさすがに短絡的です。
よくよく内容を吟味したうえで、専門家の助言を得ながら作成すべきです。


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