相続コラム

「遺言」のコラム

公正証書の遺言は、全部で三通作成されます。
原本、正本、そして謄本です。


原本は、公証役場に保管されます。
正本は、通常は遺言者自ら保管し、遺言者の死後に遺言執行者または遺族がこれを使って執行手続きを行います。
謄本は、その名の通り、正本のコピーのようなものです。


ですので通常は正本と謄本は当事者の手元にあるはずなのですが、長い年月を経て紛失してしまうことがあります。
そのような際に活用して頂きたいのが、公証役場での「検索」です。

遺言の検索は、遺言した方が死亡した場合のみ、相続人、遺言執行者などの利害関係者が請求できます。
遺言者が生存中は、遺言公正証書の検索の依頼・謄本請求ができるのは遺言者本人のみです。たとえ相続人であっても請求できません。


●遺言公正証書の検索・謄本請求についての必要書類

? 遺言者本人が死亡したことを証明する書類
   除籍謄本・死亡診断書等
? 請求人の利害関係者であることを証明する書類
   戸籍謄本(?の除籍謄本に、請求人の名前が載っている場合は不要)
? 請求人の身分を証明するもの
   印鑑登録証明書1通及び実印(発行後3ヶ月以内のもの)
      又は
   官公庁発行の顔写真付き身分証明書及び認印
     パスポート・運転免許証・住民基本台帳カード(顔写真付)など


例えば「故人が生前に遺言を作成したかどうか、念のため確認したい」というような場合にも活用できます。
意外と作成していたりするものです。

「分割困難な財産が多いケース」と言っても、なかなかイメージし難いと思います。


よくあるのは「不動産がやたらと多く、現預金が少ない」ケースです。

現預金を分割するのは割と簡単ですが、不動産は難しいことが多いです。

何故かといいますと、まず不動産の価値を算定しなければなりません。「一物四価」という言葉がある通り、不動産の価値は一概にビシッと決められるものではありません。

そして更に、安易に共有分割すべきものでもありません。共有するのは簡単ですが、そのしっぺ返しは必ず次の世代に跳ね返ります。


私の地元である北海道の場合、農家あるいは元農家の方に多くみられるケースです。


「だったら不動産を早めに換金するなどして、現金の割合を増やせば良いではないか」

それはその通りなのですが、そう簡単にはいかない事情もあったりします。

「この土地は長男に相続させた方が都合が良い」

「自宅は妻に相続させたい」

というような個別事情も有り得ましょう。


そのような場合、あらかじめ遺言にて

「○○の土地は長男Aに、××の土地建物は二男Bに」

と定めておくことを検討してみましょう。


同様の問題は代々の地主ばかりではなく、会社経営者にも当てはまります。

自ら創業した自社株式が全財産の大半を占める、というケースは決して珍しいものではありません。

後継者以外の人が相続すると何かとややこしいことになります。

誰に渡すべきか、遺言で指定しておくことを検討しましょう。


上記いずれのケースにおいても、各相続人の遺留分を侵害していないかどうかは細心の注意を払いましょう。



人間関係というものは本当に難しいものです。

最も身近な存在といえる親子関係や兄弟関係においても、仲がこじれてしまっているケースが多々あります。


私の経験上最も多いパターンの一つとして、親が特定の子だけを優遇し(例えば大学に行かせる、家を買い与えるなど)、他の子がそれに対して強い不公平感を持ち続けながら今に至る、というものがあります。


親の側としては決して本意ではないでしょう。「それは誤解だ」と主張したくなる部分も多々ありましょう。

「A子にばかり手を掛けてしまい、B子のことはほったらかしだったなぁ。」と反省する部分もありましょう。


いずれにしても「仲がこじれてしまっている」という事実を解決するのは容易ではなく、遺産分割の際にはほぼ必ずといっていいほど争いの元になります。


このようなケースにおいては、まさに遺言の出番だと思います。


遺産分割は一先ずさて置き、肉親同士の心を和解させるために「付言」を最大限活用すべきです。


付言とは、法的な効力はありませんが、例えば遺言の末尾に


「私がこのような遺産分割を指定した理由は、○○○だからである。A子とB子が私の死後も仲良くしてくれることを私は心から祈ってます。」


というような一言二言を添えることです。


この付言を活用して、不仲な肉親同士の心を打ち解けるべくメッセージを発信しましょう。


自分の親を心の底から憎む子なんて、そう滅多にいません。

そして血を分けた兄弟を心の底から憎む人も、同様にそう滅多にいません。


100%テキメンな効果を発揮する、とまではいかなくとも、少なくとも心の氷をほんのちょっとだけでも溶かすことはできるでしょう。


なお、遺言は原則として公正証書遺言をお勧めしますが、この付言についてのみ自筆証書遺言にする、という方法もあります。

味気ないワープロ書きの公正証書よりも、やはり自筆の方が人間の心にストレートに届くと思います。



人が亡くなりますと、その遺産は原則として、相続人間で遺産分割することになります。


相続人でない人が受け取る、ということは全く不可能ではないのですが、税務上は「相続人からの贈与」という扱いになってしまいますので、多額の贈与税が発生する可能性があります。


そのようなリスクを回避するために、生前に遺言を作成しておくことをお勧めします。


例えば、次のようなケースです。


1.身の回りの世話をしてくれた息子の妻に、いくらか財産をあげたい。


2.慈善団体や市町村に財産の一部を寄付したい。


3.自分名義のマンションに住んでいる孫に、そのマンションをあげたい。


遺言で、相続人以外の人や市町村、団体などに財産をあげることを「遺贈」といいます。

遺贈であれば、前述した贈与税の問題は発生せず、円滑に財産を渡すことが可能となります。


上記2について補足しますと、私がよく受けるご相談として、


「町外れの不動産を所有している。全く使い道が無いので、札幌市に寄付したい。」


というようなものがあります。


その旨を遺言に記載するのは自由なのですが、はっきり申し上げますと、そのような使い道の無い、価値の低い不動産を札幌市が有難く頂戴するとは思えません。恐らく拒否されると思います。

不要な財産は、出来る限り生前に処分するなど自助努力をすべきです。


どうしても、というのであれば、例えば記載事項の末尾に

「ただし札幌市がその遺贈を拒否した場合には、○○に相続させる。」というような次善策を盛り込んでおきましょう。


また、正当な相続人の遺留分を侵害するような遺贈は慎みましょう。

余計な争いを勃発させてしまうだけです。

ほどほどにしておきましょう。


何事も「ほどほどに」が大事です。

遺言は、皆がハッピーになるための手段として活用すべきです。

いらぬ争いを巻き起こしてはなりません。



配偶者が存命の前提で相続が発生した場合、相続人は以下の4パターンに分類されます。


1.配偶者のみ

2.配偶者と子

3.(子がいない場合)配偶者と実親

4.(子と実親がいない場合)配偶者と兄弟姉妹


上記1〜3は比較的(あくまでも比較的、ですが)遺産分割協議はスムーズに運びますが、問題となるのは4です。

配偶者と兄弟姉妹は、子や実親に比べると、その人間関係は疎遠になりがちです。

疎遠な人間関係同士でのカネに絡む話し合いは、どうしても気まずい雰囲気になりますので、精神衛生上よろしくありません。


そこで、このようなケースの場合は、早めに遺言を作成しておくことをお勧めします。


多くの場合、このようなケースでは「配偶者に全財産をあげたい」とお考えになるでしょう。

(嫁には1円足りともあげたくない!という方もいらっしゃるでしょうが、それはまあレアケースということで…)

兄弟姉妹には遺留分がありませんので、そのような内容の遺言で全く問題ありません。


もちろん、大変世話になった兄弟姉妹にいくらか渡したい、とお考えであれば、その旨記載し、残りを全て配偶者に渡す、という内容にすればよいのです。


また、ご自身よりも先に配偶者が亡くなってしまう可能性もあります。

そのような場合に備えて、「私よりも先に妻が亡くなった場合は、兄弟姉妹に財産を均等に相続させる」という内容を付け加えておきましょう。


更に、配偶者も一緒に遺言を作成しておけば、尚ベターです。

子がいないご夫婦は、是非ご検討下さい。



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