相続コラム

「相続対策」のコラム

今年の税制改正大綱は全体的に地味ではありますが、いくつか目を引く内容もあります。
その中の一つに、タワーマンション節税を防止する案があります。

そもそもタワーマンション節税とは何かを解説します。

不動産の相続税評価額は、路線価や固定資産税評価額に基づき、更に借地権や貸家権など減額要因が少なからずありますので、実際の売買価格よりも低い評価額となります。
そこを狙い目として、流通性の高いタワーマンションの高層階部分を購入します。

仮に1億円で購入したとしましょう。
物件の条件等にもよりますが、概ね7?8千万円ぐらい、場合によっては半額の5千万円ぐらいの評価額になることもあります。相続税の節税効果としては莫大なものになります。

その所有者が亡くなった後、その物件を相続した相続人は直ちに物件を売却し、1億円のキャッシュを手に入れます。
これが節税スキームの概要です。

これはけしからんということで、大綱で高層階の相続税評価額を引き上げる検討に入ることになりました。売買価格水準にほぼ近い評価額にして節税効果を無くすということです。

具体的には、評価の元となる固定資産税評価額に一定の率を乗じて評価することになるのでしょう。

現時点では大綱なので最終決定ではありませんが、まあ要するに「いたちごっこ」です。
国側と納税者側との間で、今後もこのようないたちごっこは延々と繰り返されるのでしょう。
我が国の税制の宿命と言えます。

応用編というほどのレベルではないのですが、株式会社の株式を生前に移転するタイミングについて解説します。

株式の評価は、その会社が抱える内部留保の額によって増減します。
利益を出せば評価額は増えますし、逆に赤字を出せば減ります。

これを活用し、赤字を出したタイミングで贈与する、という方法があります。
小規模な零細企業はそもそも内部留保が薄いことが多いので、ちょっとした赤字ですぐに債務超過となり、評価額がゼロとなることが多いです。役員報酬を多めにするなどの方法を検討しましょう。

あるいは、そもそも会社を設立する時点で、株主を自分以外の者にする方法もあります。
この場合は、その出資資金の出処がどこか(出資者自身の財産か、それとも他人の財産か)が税務上の論点となりますので、要注意です。


一般社団法人を活用した相続税対策も最近注目されております。

一般社団法人と株式会社の大きな違いは、出資という概念が存在しないことです。
つまり出資額を財産評価する必要が無い、ということです。

会社を使った節税対策は、短期的に考えれば不動産の時価と相続税評価額との差額を利用した株式評価額の圧縮効果の活用が主となりますが、長期的に考えれば不動産収益の内部留保により株式評価額は段々と上がっていきます。

これが一般社団法人であれば、いくら内部留保しても、その留保額が個人に帰属することはないので、個人資産として評価されることはありません。

合名会社の活用は短期的目線で、一般社団法人の活用は長期的目線で行うべきでしょう。

合名会社を活用した相続税対策があります。

合名会社とは、役員全てが「無限責任社員」といわれるものです。無限責任とはつまり「会社全てのリスクに対して責任を負う」というような意味です。

我々が「会社」と聞いて一般的に想像するのは「株式会社」ですが、株式会社の株主は有限責任であり、自分が出資した額の範囲内でしか責任を負いません。最悪大赤字で会社が倒産したとしても、株主はその出資額が戻って来ないだけで済みます。

ところが合名会社はそうはいきません。無限責任ですから、その会社が有している債務、例えば銀行借入金、給与や税金の未払いなど、個人資産を処分してでも支払う義務があります。

ということは、その合名会社の財務内容が債務超過であった場合には、その出資額はマイナス財産として評価できますよ、ということです。

【国税庁HP】
合名会社等の無限責任社員の会社債務についての債務控除の適用
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/sozoku/05/03.htm

合名会社が賃貸用不動産を銀行ローンで取得すれば、その財産(土地・建物)は実際の取得額よりも低い評価額となりますし、一方で銀行ローンは額面での評価となります。
つまりマイナス評価となりますよ、ということです。

これが株式会社だと、有限責任なのでマイナス評価はできません。
ゼロ円が限度です。


法人設立を活用して節税を図る方法については、以前述べました。

法人設立で所得税・相続税を節税する方法
http://search.ameba.jp/search.html?q=%E6%B3%95%E4%BA%BA%E8%A8%AD%E7%AB%8B&aid=sapporo-souzoku

上記シリーズは主に法人が不動産に対してどう関わるかについて「管理会社方式」「サブリース方式」「不動産所有方式」の三つをご紹介しました。

しかし最近はますます法人スキーム活用の議論が盛んになり、例えば一般社団法人、合名会社といった法人の種類ごとの特徴を活用したスキーム、あるいは定期借地権の活用など非常に奥深いスキームが提唱されております。

また消費税還付スキームについても、一旦は税制改正で歯止めが掛けられたにも関わらず、更にその抜け道をくぐったスキームが提唱されたりしております(現段階では、今年度の税制改正で更に歯止めが掛かる予定であり、還付は今後ほぼ無理そうな感じですが...)。

よって次回より、新たな法人活用スキームについて、また数回に分けてお話をしていこうと思います。まず次回は合名会社の債務控除を活用した手法をご紹介します。

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