相続コラム

「相続対策」のコラム

不動産所有方式の注意点、その3です。

オーナー個人所有の既存物件を会社名義に変更する場合に発生する費用について。

少なくとも以下の費用は必ず発生します。

・不動産取得税
・名義変更にかかる登記費用(登録免許税、司法書士報酬)

上記が具体的にいくらになるかは、その物件の固定資産税評価額によりますので一概には言えませんが、まあそれなりの(ケースによっては目玉が飛び出るぐらいの)金額になる可能性はあります。

ほかにも発生する可能性があるものとして、

・不動産鑑定士の鑑定料

があります。
資産の売買は時価で行うのが大原則でありますが、身内や同族会社との間で行う取引はその辺が非常にルーズになりがちです。
通常の時価よりも高いor安い価格で取引してしまうと、税務上デメリットが生じる可能性があります。
ですので、不動産鑑定士の評価(お安い簡易的な評価で充分です)をお願いして、適正な時価を算定することをお勧めします。

また、不動産の譲渡に伴い譲渡益が発生する場合には、譲渡所得税(+確定申告を税理士にお願いする場合にはその報酬)が発生します。

これらのコストを事前に吟味した上で、移転すべきかどうか判断しましょう。

不動産所有方式の注意点、その2です。

新築物件はともかくとして、既に所有している物件を法人に移転させることの是非について。

その物件が高収益であれば、法人名義にすることを検討する余地は充分あります。
法人の株主を子や孫にしておくことによって、その物件から生じる収益を株主に帰属させることができる、つまり財産価値を無税で世代飛び越えさせることができるからです。

ただし、10年あるいは20〜30年の長期的スパンで考えれば、の話です。
短期的スパンで考えますと、オーナーさんの所有する不動産が法人に移転することの見返りとして、その法人から決済資金(決済されない場合は未収債権)を受け取ることになりますので、オーナー個人の財産評価額は上がってしまいます。

決済資金や未収債権は元本の額イコール評価額となります。
不動産は固定資産税の評価額や路線価を元に評価しますし、更に借地権や借家権の減額、小規模宅地特例の適用なども使えますので、実際の時価よりも低い評価額を適用できます。

財産を組み替えてしまう(不動産→現金・債権など)ことによって、将来の相続税が増えてしまうことになります。

ですので無理せず、長期的スパンでシミュレーションした上でじっくり検討されることをお勧めします。

不動産所有方式の注意点、その1です。

法人の株主は、誰にすべきでしょうか。

法人の株式も、立派な財産です。
法人が今後どんどん利益を出していけば、それだけ株式の価値も上昇します。

であれば、その株式を、子や孫など下の世代に所有させてしまえばどうでしょうか。
そうすることによって、その株式の価値上昇分は下の世代が所有するということになります。

スタートの時点つまり法人設立時から子(孫)を株主にしてもよいですし、株式の価値がさほど大きくないうちに贈与してしまう、という方法でもよろしいです。

ここで一番注意して頂きたいのは、いわゆる「名義貸し」です。
形式上は子(孫)の名義であったとしても、実質上はオーナー自身の名義である、とみなされてしまうケースが非常に多く見受けられます。

設立時に子(孫)を株主にするのであれば、その資本金額は子(孫)の財産から拠出したものでなければなりません。
また途中から贈与するということであれば、親子間の合意、それを証明する贈与契約書、そして贈与税が発生するのであれば贈与税の申告書、これらの証拠資料をきちんと整備しておく必要があります。

身内間の取引というものは、どうしてもこの辺が曖昧になってしまいがちです。
しかし多額の財産を扱う取引であれば、むしろ身内間であるほど慎重に、しっかりと証拠を残しておくべきです。
そうしないと、後々の税務署とのやり取りで痛い思いをすることになります。


続いて不動産所有方式です。

仕組みは至って単純で、
要は会社が不動産を所有する、という、まさにそのまんまです。

会社が不動産の所有権を有する、という毅然たる事実がありますので、さすがの税務署も文句の付けようがありません。

不動産オーナーが会社を作って節税する方法としては、今はこれが最もオーソドックスな方法となっております。

ただ色々と検討する余地はあります。

既にオーナーが所有している既存物件をどうやって会社名義に移すのか?
その資金はどうするのか?

会社の経費として許される範囲はどこからどこまでか?

新築物件を会社名義にする場合、土地建物すべて会社名義にすべきか?

会社名義にすることによって、逆にデメリットは発生しないのか?

などなど。

次回以降、これらを一つずつ検証していきます。

続いてサブリース方式について説明します。

大雑把な流れを説明しますと

1.オーナー個人と法人との間で賃貸借契約を交わす
   ↓
2.オーナー所有の物件(全部or一部)を、法人が一括して借り上げる
   ↓
3.法人と入居者との間で賃貸借契約を交わす
   ↓
4.入居者が法人に家賃を支払う
   ↓
5.法人がオーナーに家賃を支払う

というような感じです。

つまりオーナーと入居者との間に法人が割り込む形になりますので、その法人は家賃の一部を利ザヤ収入として得ることができます。
どの程度の利ザヤが妥当かというと、世間の一般的な相場はおおむね10〜15%程度のようです。

管理会社方式と比べると、まず利ザヤ収入のパーセンテージが高い、というメリットがあります。
そして管理会社は管理業務の実態が問われますが、サブリースはそもそもサブリースすること自体が事業目的ですので、契約書面とお金の流れさえしっかり整えておけば、実態面での問題はありません。

逆にデメリットを申し上げますと、空室リスクを背負ってしまうことです。
満室状態であれば何の問題もないのですが、空室が増えてしまうと、サブリース会社がオーナーに対して空室分の賃料を負担しなければなりませんので、資金ショートしてしまう可能性があります。

大手賃貸ハウスメーカーの多くがこの方式で商品を販売しておりますが、何故それが成り立つかといえば、各メーカーが空室リスクを許容できるだけの企業体力を有していること、そして空室を埋めるだけの営業力を保有していること、これに尽きると思います。

このリスクを踏まえた上で、あまり安易にサブリース方式を選択するのではなく、よく検討した方がよろしいと思います。

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