相続コラム

「贈与税」のコラム

生前贈与のご相談にいらっしゃるお客様の相談内容で意外と多いのが、

「毎年一定額を贈与すると贈与税が高くなるのでしょうか?」

というものです。

 

これは俗にいう「連年贈与」というものです。

具体例を挙げます。

AがBに対して、毎年200万円ずつ、5年間に渡って現金を贈与したとします。

毎年課せられる贈与税は、(200万円−基礎控除額110万円)×10%=9万円。

5年間の贈与税額の累計は、9万円×5年=45万円。

 

ところがどっこい、税務署が「これは連年贈与ですね!」と認定すると・・・、こうなります。

AはBに対して当初「1000万円を贈与します。ただし一度に現金を渡すのではなく、5年間の分割払いとします。」という約束をした。この約束をした時において、AからBに対する1000万円の贈与が成立している。その際に課せられる贈与税は、(1000万円−基礎控除額110万円)×40%−125万円=231万円(!!!)。

実に186万円の税額増加、となってしまいます。

 

多くの方はこのように数年に渡って贈与することを検討してらっしゃいますので、「税務署に連年贈与と認定されてしまったらどうしよう?」と心配してしまうのです。

たしかにインターネットを検索すると、次から次へと「連年贈与は危険ですよ!」という記事が多く出てきます。果たしてどうなのでしょうか?

 

結論から申し上げますと、(これは私個人の実務的感覚ですが)そこまで神経質に思い悩む必要はないのではないかと思います。

まず上記の具体例において、「当初において連年贈与の約束が成立した」と税務署がどうやって立証するのでしょうか?これは実務上極めて難しいと思います。

そもそも、このような贈与をする人同士の人間関係は、大抵が親子などの身内関係です。つまり気の知れた仲なので、約束事に対して非常にアバウトです。覚書などの書面なんてまず交わさないでしょうし、「来年以降?ああ、カネがあったらくれてやるけど、その時になってみないと分からんよ。ワハハッ。」という程度のテンションではないでしょうか。

これが第三者同士だと話は全く違ってきます。当然覚書などの書面をしっかりと交わすでしょうし、その書面通りに契約が履行されなければ裁判沙汰になってもおかしくありません。でも、身内同士でそんなことがあり得るでしょうか。

 

このようにアバウトな認識に基づくアバウトな契約履行に関して、「連年贈与!連年贈与!」と躍起になって手間をかけて課税しようとするほど税務署はヒマではないでしょうし、仮にそうしようとしても実際に課税できる可能性は極めて低いのではないかと思います。

ですので私は、「そこまで神経質にならなくてもいいですよ。毎年、そのときにお互い話し合って、そのときの実情に合った贈与をすれば大丈夫ですよ。」と答えてます。

 

連年贈与は、確かに「教科書」的にはアリです。

しかし世の現実は教科書通りには動きません。

現実、連年贈与で課税される可能性は限りなくゼロに近い、と私は思います。



そもそも「贈与」とは一体何でしょうか?

 

民法第549条において、その定義がなされております。

 

贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、

相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

 

つまり、

贈与する側のAさんが「あなたにコレをタダであげましょう」と意思表示し、

かつ

受け取る側のBさんが「わ〜い、どうもありがとうございます」と受諾する。

Aさん(贈与者)とBさん(受贈者)、双方意思疎通が必要なのです。

 

よくありがちなケースとして、例えば・・・

ご高齢のCさんが、可愛いお孫Dさん名義の預金口座を内緒で開設しました。

Cさんは、ご自身の年金収入の一部を、そのD名義預金にせっせと入金。

Dさんはその事実を一切知らず、Cさんの相続時に初めてそれを知りました。

 

・・・このケースは、

そもそもCさんが「意思を表示」しておりませんし、

当然Dさん(受贈者)も「受諾」しておりませんから、

法的に贈与契約は成立しておりません。

ですから、Cさんが生前に積み立てたD名義預金は、

Dさんの財産とはならず、

Cさんの財産ということで遺産分割の対象になるのです。

 

「そんなバカな。名義はDなのだから、Dの財産じゃないのか。」

と思われる方もいらっしゃるでしょうが、

形式上の名義(D)よりも、実質上の名義(C)が重要なのです。

 

このように、

形式上の名義と実質上の名義が異なる財産のことを

名義財産

といいます。

 

その財産が預金ならば「名義預金」、株式ならば「名義株」です。

 

贈与契約を有効に成立させるためには、

上記の民法条文をしっかりと踏まえた上で、双方の意思疎通を行い、

その痕跡を残すために、書面で「贈与契約書」を作成すべきでしょう。

ただし、贈与税が課されることがありますので、事前に充分ご検討下さい。



「将来の相続税を減らしたい」というご相談を最近よく受けます。

オーソドックスな手法としては、まず次の三つが考えられます。

 

1.財産の価値減らす

2.生命保険に加入して相続税の非課税枠(一人当たり500万円)を活用する

3.生前贈与を活用する

 

今回は上記のうち3の生前贈与、特に暦年贈与についてお話します。

暦年贈与基礎控除額は年間110万円しかありませんので、

あまり大きな節税効果は無い、と思ってしまいがちですが、

コツコツ長く続けると結構大きな効果が得られます。

 

ここで一つ、重要なポイントをお知らせします。

基礎控除額(110万円)の範囲内で贈与税がかからないように贈与する、

と考えてしまいがちですが、

あえて多少の贈与税を支払い、たくさん贈与してしまう方が有利な場合があります。

 

具体例。

このままだと将来発生する相続税の税率が30%になりそうだ。

ということは、贈与税率が30%未満に収まるようガンガン生前贈与すれば、

このまま放置して30%の相続税を妻や子に負担させるよりもお得です。

 

子が二人いれば、それぞれに毎年400万円ずつ贈与します。

贈与税額は (400万円−110万円)×15%−10万円=335,000円

「400万円もらって35万円も贈与税を払うの?」と思うかもしれませんが、

このまま放置すると、将来もっと高い税率の相続税を払うことになります。

相続税を安く前払いするんだ、と割り切ってしまえばよいのです。

(ただ人間というものは、現実その割り切りが意外と難しいのですが・・・)

 

子二人に毎年400万円の贈与を10年間続ければ、

 400万円×2名×10年=8千万円(!!!)

相続財産を8千万円も減らすことができますし、

かつ相続財産が減れば減るだけ、相続税の税率も下がります。

 

上記を踏まえて簡単にシミュレーションした上で、

毎年コツコツと生前贈与するプランを立ててみましょう。

意外と高い効果を得られることが分かると思いますよ。



相続時精算課税制度の注意点について、です。

 

まず一点目

Aさん(父)からBさん(息子)に対して行った贈与につき、

相続時精算課税制度の適用を受けた場合、

今後BさんがAさんから受ける贈与については、

暦年課税制度 を利用することはできません

(ただしBさんが他の人から受ける贈与については暦年課税制度を利用できます

 

相続時精算課税制度の特別控除額2,500万円をフル活用するのか、

それとも暦年課税制度の控除額110万円を毎年延々と活用するのか、

慎重に検討したうえで選択する必要があります。

 

そして二点目

相続時精算課税制度の適用を受けた贈与の全ては、

将来Aさんが亡くなった際の相続税の計算上、相続財産に加算されます

 

ちなみに暦年課税制度の場合は、

相続開始前3年以内の贈与についてのみ、相続財産に加算されます

 

つまり、目先の税負担だけを考慮すると、

特別控除額の大きい相続時精算課税制度の方が断然お得ですが、

長期的視点で考えると、

暦年課税制度を利用して毎年少しずつ贈与した方がお得だと言えます。

 

最後に三点目

この制度は、

父から受ける贈与、

母から受ける贈与、

それぞれ個別に選択することが可能です。

ですから例えば、

父から受ける贈与についてのみ相続時精算課税制度の適用を受け、

母から受ける贈与については通常通り暦年課税制度の適用を受ける、

というような感じにすることもできます。



お客様のご関心が非常に高い

相続時精算課税制度

についてご説明します。

 

相続時精算課税制度とは、

1.その年の1月1日時点65歳以上(※)のまたはが、

2.その年の1月1日時点20歳以上(その子が亡くなって

  いる場合には、その孫)に対して贈与をし、

3.翌年の2月1日から3月15日までの間に、この制度の適用を受け

  る旨の届出書 を贈与税申告書に添付して税務署に提出した場合、

 

その贈与の額のうち、

特別控除額2,500万円(※)までは贈与税がかからず、

2,500万円を超えた部分に対してのみ20%の贈与税が課税される

という制度です。

 ※ 住宅取得資金等の贈与については、また別の特例がございます。

 

ちなみにこの特別控除額2,500万円は、

その贈与をした父または母が亡くなるまでの間ずっと、

複数年に渡ってゼロになるまで利用可能です。

 

具体例を挙げます。

平成21年、

父Aさん(68歳)が、息子Bさん(30歳)に1,800万円の現金を贈与しました。

贈与の額1800万円は特別控除額2,500万円以下ですので、

この年の贈与税はゼロです。

そして特別控除額の残りは、2,500万円−1,800万円 = 700万円、です。

この残り700万円は、翌年度以降に繰り越して利用することができます。

 

平成22年、

またまた父Aさんが息子Bさんに、1,000万円を贈与しました。

特別控除額の残りは700万円ですので、これを超える金額つまり

1,000万円−700万円 = 300万円、に対して贈与税が課税されます。

贈与税率は20%ですので、税額は300万円×20% = 160万円、です。

 

弊社にいらっしゃる生前贈与のご相談は、

この制度を利用して贈与税をゼロにすることができるパターンが非常に多いです。

前回ご説明した暦年贈与だと目玉が飛び出るほど多額の贈与税が発生しますが、

この制度であればそのような弊害なくスムーズに財産移転することが可能です。

 

ただし、いくつか注意すべき点がございます。

詳しくは次回にて。



このページの先頭へ戻る