相続コラム

「2013年9月」のコラム

タンス預金、というものがあります。

銀行の預金口座に入金せず、自宅のタンスの中などに隠している現金のことです。


親が亡くなった後、その親の居宅から多額のタンス預金が発見された場合。

ご自身の身に覚えが無ければ、それは親の遺した財産と判断する以外にないでしょうから、相続財産の一部となりましょう。

相続税を申告する際には、当然ながら課税対象となります。


親が存命中に、このタンス預金を使って子の自宅などを建てようとする場合。

下手すると贈与税がかかりますので、注意する必要があります。

考えられる手段としては、次の二通りがあります。


1.相続時精算課税制度などを利用する方法

2.自宅のうち、そのタンス預金に相当する部分を親の名義にする。


上記のうち1は割とオーソドックスな手法ですが、その親が多額の財産を所有しており将来の相続税を節税したい場合には、上記2も十分検討の余地があります。

ただ現金を持っているだけだと、その現金の額がイコール相続財産となります。

しかしその現金を不動産に代えてしまえば、その不動産は固定資産税評価額を元に評価されますので、通常の取引価額よりもグッと下がります。

更に特定居住用宅地の小規模宅地特例を使えるようにしておけば、節税効果は更にアップします。


タンス預金を何とか上手に始末したい、とお考えの方は、是非一度ご相談下さい。



相続税の申告をすると、かなり高い確率で税務調査が入ります。

一昔前は、申告期限から3年後ぐらいに入るのが普通でした。「相続税の税務調査は、当の本人が忘れた頃にやって来る」と冗談半分で言われたものです。

が、最近はそのペースが早まっており、大体1年後ぐらいに入ることが珍しくなくなってきているようです。


ところで、税務調査というものは、年がら年中あるわけではありません。

まず税務署の異動が、毎年7月1日付で行われます。

その時点で全ての仕事がシャッフルされます。

つまり業務の引き継ぎと言うものが、原則ありません。


そして7月中に調査先の選定が行われます。

重要な事案、つまり「ここを調査すれば税金をガッポリ取れそうだな」「何か隠し事をしてそうだな」という事案から順次調査が開始されます。

ですから8月に入る調査は、まず税務署側にとっては最も気合いの入った調査です。

そして9月、10月・・・と経過するごとに、段々と重要度が低くなっていきます。


そして12月末で、一旦調査を打ち切ります。

つまり12月末までに、何らかの結論を出す、もっとぶっちゃけて言いますと、納税者に修正申告を提出させる、ということです。


このブログ記事を税務署の調査官が読んでないことを祈りつつ書きますが、調査官は12月末が近づくにつれて、さっさと調査を終わらせようとします。つまり「これは見逃しますから、これだけ認めて修正してくれませんか?」というような駆け引きが行われます。


このタイムスケジュールを理解しておけば、納税者側の心理はだいぶ軽くなると思います。


そして年明け、1月〜3月はほとんど調査がありません。

個人確定申告のシーズンなので、皆それどころじゃないからです。


4月からまたボチボチ調査が入りますが、上記12月末の件と同様、6月末までに打ち切られます。

ですので4月以降の調査は、比較的楽な調査である、と言えます。


以上が一般的な税務調査のシーズン、タイムスケジュールに関するお話ですが、何事も例外というものがあります。

遺産額がとても大きな案件、かなり悪質なことをしている(多額の財産を隠しているなど)可能性の高い

案件は、それを専門にこなす部署がありまして、その部署は上記スケジュールは一切関係ありません。12月末や6月末を超えて調査を平気で続行します。

いわゆる「特官(とっかん)」などと呼ばれる部署です。私も特官部署の調査に立ち会ったことはありますが、さすがに調査官の面構えは結構怖いです。

でも、自分自身が一切悪いことをした覚えがない、潔白であるならば、正々堂々と対応しましょう。お役人が100%正しいとは限りませんから、あくまでも毅然とした対応をしましょう。



「分割困難な財産が多いケース」と言っても、なかなかイメージし難いと思います。


よくあるのは「不動産がやたらと多く、現預金が少ない」ケースです。

現預金を分割するのは割と簡単ですが、不動産は難しいことが多いです。

何故かといいますと、まず不動産の価値を算定しなければなりません。「一物四価」という言葉がある通り、不動産の価値は一概にビシッと決められるものではありません。

そして更に、安易に共有分割すべきものでもありません。共有するのは簡単ですが、そのしっぺ返しは必ず次の世代に跳ね返ります。


私の地元である北海道の場合、農家あるいは元農家の方に多くみられるケースです。


「だったら不動産を早めに換金するなどして、現金の割合を増やせば良いではないか」

それはその通りなのですが、そう簡単にはいかない事情もあったりします。

「この土地は長男に相続させた方が都合が良い」

「自宅は妻に相続させたい」

というような個別事情も有り得ましょう。


そのような場合、あらかじめ遺言にて

「○○の土地は長男Aに、××の土地建物は二男Bに」

と定めておくことを検討してみましょう。


同様の問題は代々の地主ばかりではなく、会社経営者にも当てはまります。

自ら創業した自社株式が全財産の大半を占める、というケースは決して珍しいものではありません。

後継者以外の人が相続すると何かとややこしいことになります。

誰に渡すべきか、遺言で指定しておくことを検討しましょう。


上記いずれのケースにおいても、各相続人の遺留分を侵害していないかどうかは細心の注意を払いましょう。



人間関係というものは本当に難しいものです。

最も身近な存在といえる親子関係や兄弟関係においても、仲がこじれてしまっているケースが多々あります。


私の経験上最も多いパターンの一つとして、親が特定の子だけを優遇し(例えば大学に行かせる、家を買い与えるなど)、他の子がそれに対して強い不公平感を持ち続けながら今に至る、というものがあります。


親の側としては決して本意ではないでしょう。「それは誤解だ」と主張したくなる部分も多々ありましょう。

「A子にばかり手を掛けてしまい、B子のことはほったらかしだったなぁ。」と反省する部分もありましょう。


いずれにしても「仲がこじれてしまっている」という事実を解決するのは容易ではなく、遺産分割の際にはほぼ必ずといっていいほど争いの元になります。


このようなケースにおいては、まさに遺言の出番だと思います。


遺産分割は一先ずさて置き、肉親同士の心を和解させるために「付言」を最大限活用すべきです。


付言とは、法的な効力はありませんが、例えば遺言の末尾に


「私がこのような遺産分割を指定した理由は、○○○だからである。A子とB子が私の死後も仲良くしてくれることを私は心から祈ってます。」


というような一言二言を添えることです。


この付言を活用して、不仲な肉親同士の心を打ち解けるべくメッセージを発信しましょう。


自分の親を心の底から憎む子なんて、そう滅多にいません。

そして血を分けた兄弟を心の底から憎む人も、同様にそう滅多にいません。


100%テキメンな効果を発揮する、とまではいかなくとも、少なくとも心の氷をほんのちょっとだけでも溶かすことはできるでしょう。


なお、遺言は原則として公正証書遺言をお勧めしますが、この付言についてのみ自筆証書遺言にする、という方法もあります。

味気ないワープロ書きの公正証書よりも、やはり自筆の方が人間の心にストレートに届くと思います。



人が亡くなりますと、その遺産は原則として、相続人間で遺産分割することになります。


相続人でない人が受け取る、ということは全く不可能ではないのですが、税務上は「相続人からの贈与」という扱いになってしまいますので、多額の贈与税が発生する可能性があります。


そのようなリスクを回避するために、生前に遺言を作成しておくことをお勧めします。


例えば、次のようなケースです。


1.身の回りの世話をしてくれた息子の妻に、いくらか財産をあげたい。


2.慈善団体や市町村に財産の一部を寄付したい。


3.自分名義のマンションに住んでいる孫に、そのマンションをあげたい。


遺言で、相続人以外の人や市町村、団体などに財産をあげることを「遺贈」といいます。

遺贈であれば、前述した贈与税の問題は発生せず、円滑に財産を渡すことが可能となります。


上記2について補足しますと、私がよく受けるご相談として、


「町外れの不動産を所有している。全く使い道が無いので、札幌市に寄付したい。」


というようなものがあります。


その旨を遺言に記載するのは自由なのですが、はっきり申し上げますと、そのような使い道の無い、価値の低い不動産を札幌市が有難く頂戴するとは思えません。恐らく拒否されると思います。

不要な財産は、出来る限り生前に処分するなど自助努力をすべきです。


どうしても、というのであれば、例えば記載事項の末尾に

「ただし札幌市がその遺贈を拒否した場合には、○○に相続させる。」というような次善策を盛り込んでおきましょう。


また、正当な相続人の遺留分を侵害するような遺贈は慎みましょう。

余計な争いを勃発させてしまうだけです。

ほどほどにしておきましょう。


何事も「ほどほどに」が大事です。

遺言は、皆がハッピーになるための手段として活用すべきです。

いらぬ争いを巻き起こしてはなりません。



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