相続コラム

「相続対策」のコラム

何を贈与するか、ということも大事です。

具体的には、現金預金、不動産、車両、株式など。

特に注意すべきなのは不動産の贈与です。
何故かというと、色々な費用がかかるからです。

名義を変更する際にかかる登録免許税、司法書士報酬。
変更した後、忘れた頃に都道府県税事務所から請求される不動産取得税。
変更した翌年からかかる固定資産税。

不動産は高額なので、贈与税額にも注意を払う必要がありますが、
これらの諸費用についてもどれぐらいかかるのか、あらかじめ知っておく必要があります。

かつ、これら諸費用を考慮した上で、生前贈与の損得を検討しなければなりません。


生前贈与、なかでも暦年贈与は、細く長く続けてこそ効果を発揮します。

まず太くやってしまうと、税率が高くなりますので、かえって損になる可能性があります。
「何もしないで相続税を払った方が安く済んだ」ということになってはいけません。

また短くやってしまうと、贈与の総額が少なくなるのは勿論のこと、タイミングによっては「生前贈与加算」に該当してしまう場合があります。

生前贈与加算とは

https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4161.htm
「相続などにより財産を取得した人が、被相続人からその相続開始前3年以内(死亡の日からさかのぼって3年前の日から死亡の日までの間)に贈与を受けた財産があるときには、その人の相続税の課税価格に贈与を受けた財産の贈与の時の価額を加算します。」
(国税庁ホームページより抜粋)

つまり相続人に対する贈与のうち、相続日から3年以内のものについては、なかったものとされます。

10年続けて贈与した後に亡くなれば、直近3年分はなかったものとされますが、それ以前の7年分はOKです。
20年続けて贈与した後に亡くなれば、直近3年分はなかったものとされますが、それ以前の17年分はOKです。

つまり長く続けた方がお得、ということです。


さて、一人に対して年間300万円の贈与を10年間続けたとします。

贈与税額19万円×10年間=190万円

10年間で計190万円の贈与税を納付することになります。
これに対し、将来発生する相続税はどれだけ節税されたのでしょうか。

300万円の10年分ですから、3,000万円の財産が減少したことになります。
ご本人の贈与前の財産が2億円だとすれば、贈与後は1億7千万円です。
相続人の数が子3人であると仮定すると、

【贈与前】
(2億円?基礎控除額4,800万円)÷3=50,666千円
50,666千円×30%?700万円=8,199,800円
8,199,800円×3人=24,599,400円

【贈与後】
(1億7千万円?基礎控除額4,800万円)÷3=40,666千円
40,666千円×20%?200万円=6,133,200円
6,133,200円×3人=18,399,600円

【節税額】
24,599,400円?18,399,600円=6,199,800円


上記節税額から納付贈与税額を差し引くと、
6,199,800円?1,900,000円=4,299,800円

実に430万円弱の節税となります。


例えば、このように考えます。

相続税の最低税率は10%です。
つまり、税率10%未満の生前贈与をすれば、間違いなく節税効果が出ます。

では税率10%未満の贈与とは、具体的にどれぐらいでしょうか。
まず300万円の贈与税額を計算してみます。

(300万円?基礎控除額110万円)×10%=19万円

300万円に対して19万円の贈与税です。
実質的な税率は、

19万円÷300万円≒6.3%

明らかに節税効果が出ますね。
このように、

「300万円贈与すると19万円も税金を払うのか!」

と狭い視点で考えるのではなく、

「相続税率よりも安い税率で贈与できるのか!お得だ!」

と広い視点で考えるのが、賢い節税のコツです。

贈与の要件を満たすための要件は、他にも色々あります。

■贈与契約書を作成しているか?

法律上、贈与は口頭での意思疎通でも成立します。
しかし税務署などの第三者に対抗するためには、証拠が必要です。
これは贈与なんですよ、という物的証拠を一つでも多く残すことです。
そのためには贈与契約書をきちんと作成しておくべきです。

「家族間でそんな仰々しいこと、する必要あるの?」

家族間だからこそ、やるべきことはしっかりやりましょう。
なあなあではいけません。


■贈与税の申告・納付をしているか?

贈与するということは、その贈与にかかる税金、つまり贈与税の手続きをちゃんとしているか、ということになります。

「贈与すると贈与税がかかる、というのは、今や国民の常識でしょう。それをきちんとしていなかったということは、つまり贈与の意志が無かったということでしょう」
税務署側がよく使うロジックです。


■受贈者(もらった人)名義の通帳・銀行印等は本人が保管しているか?

贈与したということは、その贈与財産を好きに使ってもいい、ということです。
にも関わらず、相変わらず通帳や印鑑を贈与者(あげた人)の手元に保管している、というのでは、実質的に贈与したことにはならないでしょう。


■金銭の贈与は、銀行口座の振込みで行っているか?

現金の受け渡しだと、証拠が残りません。
預金口座を通じて行うのがベストです。


上記全てを満たせばそれで良い、ということではありません。
これらの事実一つ一つを積み重ねて、総合的に判断されることになります。

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