相続コラム

「信託」のコラム

信託財産から生じる不動産所得の赤字と、信託以外の一般財産から生じる不動産所得の黒字を相殺することはできません。

例えば、次のようなケース。

信託財産の赤字    △300万円
信託以外の財産の黒字 +200万円

プラスマイマスして△100万円、従って所得ゼロ→税額ゼロ、といきたいところですが、それができません。
このケースでは、信託財産の赤字△300万円は無かったものとされ、信託以外の財産の黒字200万円に対して所得税が課されることになります。

これと同様に、信託財産の赤字を翌期以降に繰り越すこともできません。

信託を悪用した租税回避スキームを防止するために規定されたものだと思いますが、少々やり過ぎのような気がします…。
が、法律でそう決まっている以上は守らなければなりませんので、今のところはどうしようもありません。

賃貸不動産から生じた収益は、たとえそれが信託財産であろうとも、不動産所得として確定申告する必要があります。

では誰が申告しなければならないかと申しますと、その収益を得る権利を有する人、つまり受益者です。
元々の所有者である委託者、形式上の所有者である受託者は申告する必要がありません。

若干の例外規定はありますが(後日説明します)、基本的には通常の確定申告とほぼ変わりありません。
まず暦年(1月1日〜12月31日)を一つの期間として所得計算しますので、たとえば信託の計算期間を4月1日〜3月31日としているような場合は注意が必要です。必ず暦年に置き換えて計算し直さなければなりません。

そしてこれまた基本的なことですが、受益者が受託者から信託配当を受け取っているか否かに関わらず、その得られるべき収益の額を申告しなければなりません。会計上「発生主義」「実現主義」などと呼ばれるものです。

また申告書に別途添付しなければならない書類等があることは既に申し上げた通りです。
http://ameblo.jp/sapporo-souzoku/entry-11917332481.html

受託者は、毎年1月31日までに、「信託の計算書」を税務署に提出しなければなりません。
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei/annai/23100054.htm

主な記載事項は以下の通りです。

1.委託者、受益者の氏名や住所など
2.前年12月31日時点の、その信託にかかる資産や負債の内訳
3.前年中における信託の収益や費用の内訳
4.受託者が受け取った報酬の額

この計算書は、受益者ごとに作成します。

なお、収益の額が3万円以下である場合には、原則この計算書は提出する必要はありません。

前回の続きです。

当然ながら、信託財産が賃貸不動産など収益を生ずるモノである場合は、受益者は毎年確定申告する必要があります。

賃貸不動産であれば、通常のごく一般的な不動産所得として申告する他に、その信託契約ごとに収支を別途算定した明細書を添付する必要があります。

受益者が、信託財産のほかに、自ら所有する賃貸不動産などを有している場合には、きちんと分けて経理する必要がありますのでご注意ください。


信託は、税務署と切って切り離せない関係にあります。

信託そのものが税務と非常に密接な関係を有しておりますので、税務署に都度提出する書類は色々とあるのです。

まず「信託に関する受益者別(委託者別)調書(合計表)」について。
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei/annai/23100063.htm

この書類は、以下の事由が生じた日の属する月の翌月末日までに、受託者が提出しなければなりません。

1.信託の効力が発生したとき

2.受益者等が変更されたとき

3.信託が終了したとき

4.信託の権利内容が変更されたとき

ただし、その信託財産の相続税評価額が50万円以下である場合などに該当するときは、提出する必要がありません。

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